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2019/10/18

給与計算のアウトソーシングのメリット・デメリット。アウトソーシング先は自社の企業規模で判断するのがベスト

給与計算のアウトソーシングのメリット・デメリット。アウトソーシング先は自社の企業規模で判断するのがベスト

企業が成り立つ上で、人材は欠かせない。そしてその人材には給与が発生する。つまり、企業にとって給与計算は必要不可欠な業務だ。

しかし、給与計算は重要で専門性が高い業務のわりにルーティン業務が多い。企業同士の競争力が激化する中、ルーティン業務を出来る限り減らして企業のコア業務に人材を活用したいのが実情だ。

今回は給与計算をアウトソーシングすることでどのようなメリット・デメリットがあるのか自社の企業規模も踏まえて紹介していく。

給与計算アウトソーシングの内容

ルーティン業務といっても、業務は多岐に渡る。自社で行っている業務がどのように行われているのか業務プロセスの洗い出しを行い、どの業務にどの程度の時間を要しているのかをまず整理する必要がある。その上で、アウトソーシング内容を検討すべきだ。

 

給与計算業務の代行

勤怠情報を集約しまとめる。それ以降の給与計算(社会保険料、雇用保険料、住民税、所得税)を行ってもらい給与明細を発行してもらうことで、自社内の業務をスリム化し、正確な給料を支給することで従業員からの信頼も高まる。

 

年末調整代行

総務・経理にとって重要かつメイン業務の1つだ。年末から年初にかけて繁忙期となり、従業員からの扶養控除申告書の回収、内容チェック、未提出者及び誤記入による従業員とのやり取り確認等、業務量は膨大だ。

それ以降も、市区町村に支払報告書の提出、税務署への法定調書の提出と仕事は続く。その膨大した作業を、アウトソーシングできるのは大きな業務削減に繋がる。

また、近年は年末調整に関するクラウドシステムも多く登場しているため、こちらも選択肢に入れても良い。

 

住民税関連の手続き代行

市区町村に支払調書を提出することで、5月~6月にかけて特別徴収額通知票が届く。それをもとに、1年かけて従業員から住民税を徴収して市区町村ごとに納付する。
当然、従業員ごとに徴収額は異なり、給与ソフトを活用している場合は1年間の額の入力作業がある。かつ似通ってはいるが市区町村ごとに通知票は異なり、作業には手間がかかる。

また、入退者等が発生すればその都度、給与所得者異動届出書の提出も必要だ。

社労士①

外注・代行・アウトソーシングの利用率は?

日本においての利用率は、10%~20%と利用率は低い。そこには理由があり、アメリカなどでは州ごとに法律が異なる場合、その点に特化した企業に依頼することでメリットがある。
その反面日本は統一された法律であり、さらに人材を重んじる風土もある。外部に委託するのではなく自社力を高め内部で仕事を行うことが主流であった。

しかし、働き方改革に伴う法改正や終身雇用の崩壊、労働力人口の減少、社内のコア業務に必要な人材を割くことになり、これまでとは異なり給与計算のアウトソーシングの利用率は、着実に上がっていくことだろう。

人事労務①

給与計算業務の中には独占業務がある

給与計算自体には、独占業務はないが。そこから波及した仕事には税理士、社労士の独占業務が発生する。アウトソーシングする上で、欠かせない士業の2つだ。

 

税理士の独占業務

・税務面の代理申告及び代理申請

・税務面の書類作成及び提出

・税務面での相談

税理士と言えば、経理のエキスパートだ。税務面の法律は非常に細かく、少し法の解釈を間違えるだけでも税務署からの指導立ち入りが発生する可能性がある。そのようなリスク管理には税理士に依頼することが必要だ。

 

社労士の独占業務

・労務面での代理手続き

・就業規則の作成及び改定

・人事労務面での相談

税理士が経理であれば、社労士は人事労務のエキスパートだ。給与計算には人事労務面が大きく関わる上に、「労働倒産」という言葉もあるくらいだ。労務関係の法律を得意とする社労士に依頼することでリスク管理を行う。

社労士②

給与計算を外注・代行・アウトソーシングするメリット

前述したように、給与計算は重要な業務のわりにルーティン業務である。その業務を外部委託することでのメリットを挙げていく。

 

安定した給与計算が出来る

専門性が求められる給与計算を、専門家に依頼することで正確かつ安定して行うことが出来る。専門性が高く、重要な個人情報であるがゆえに、自社内で行う場合どうしても知識経験のある人材に業務が集中しがちだ。

しかし、その人材が病気やケガで休むことで業務が滞ってしまう。また、退職するとなると引継ぎも困難を伴ったり、ミスが増えるなどといったリスクの恐れもある。それらのリスク管理も出来る点は、大きなメリットだ。

 

安価なコスト

人材を活用すると基本給以外にも残業代や繁忙期であれば休日割増等々、変動して人件費が発生する。

しかし、アウトソーシングすることでコストが固定化され予算がたてやすく、財務面でも助かるメリットがある。

 

社員育成が不要

給与計算は専門性が必要で、自社内で行うと育成が必要だ。

更に、給与計算関連の法律は目まぐるしく法改正が行われる。その点にもしっかり対応して行ってもらえることは、企業にとっても大きなメリットだ。

 

人材を有効活用できる

給与計算は欠かせない業務だが、毎月発生するミスのできない業務であるため、アウトソーシングできれば自社内の業務量が大きく減る。その結果、自社内の人件費を減らすもこともできるが、人材の労働時間を別のコア業務に回すことも可能だ。

HRテック①

給与計算を外注・代行・アウトソーシングするデメリット

何においてもそうだが、メリットがあればデメリットもある。給与計算においてはどのようなデメリットがあるか挙げていく。

 

自社内の能力が向上しない

これが一番のデメリットだ。専門性の高い業務を外部に頼ることで、自社内での情報更新が進まなくなる傾向がある。

給与や人事労務に対する質問相談、法改正による就業規則の改定とリアルタイムで行うことが出来ない上に、コンプライアンスの希薄化の恐れもある。やはり、一定程度の社内のノウハウを残すために労務面の知識を社内に残すことは必要だ。

 

ある程度の事務負担は残る

アウトソーシングする以上、自社内での情報更新があればしっかり提供しなければならない。新入社員の情報、扶養者の変更、住所変更と細々とした内容まで給与計算には影響がある。勤怠管理同様に、それらを取りまとめてミスなく管理することは必要だ。

ただ、こちらも人事労務のクラウドシステムを利用すると情報の共有はしやすい。

 

情報漏洩

もちろん自社内で行う場合でも、漏洩の可能性はある。しかしアウトソーシングする結果、情報共有する範囲が広がる。情報漏洩のリスクは高まることは否めない。

アウトソーシング①

給与計算の外注・代行・アウトソーシング先は企業規模別に選べば失敗しにくい

あくまで目安と私的な見解が含まれるが、企業規模によっては重視する内容も異なってくる。規模別にベストなパートナーを挙げていく。更に、急な企業成長にも対応出来るようにある程度、先を見据えた検討も必要だ。

 

企業規模が10名以下の場合は税理士

10名以下であれば、入退者数もさほど多くなく給与計算の内容も複雑ではない場合も多い。税理士の関与率は90%を超えているといわれている。関与している社労士がいれば社労士に頼むのがベストだが、社労士の必要性を感じていない場合は給与計算の為だけに社労士と契約をすることなく、税理士にそのまま委託する方がコスト的なメリットが多い。

 

企業規模が1,000名以下の場合は社労士

10名か1000名では大きな違いがあるが、100名を超えてくると人事労務面での事務手続きも煩雑になってくるし、様々な人事労務に関するトラブルや疑問も発生する。税理士では労務事務の手続きは行うことができないし、専門家ではないため質問の回答も困難な場合も多い。その点を踏まえると、税理士ではなく社労士を活用する方が委託企業にとってはメリットが多い。

1000名に近づくにつれアウトソーシング会社も含めた、ある程度規模が大きい業者に依頼する必要が出てくる。

 

企業規模が1,000名超の場合は給与計算代行会社

1000名を超えてくるとアウトソーシングする場合、給与計算専門のある程度規模が大きいアウトソーシング会社も選択肢に入ってくる。

一番のメリットは大規模案件に慣れており、BPO企業としての成熟度も高く、情報セキュリティも高いケースが多い。もちろん、社労士・税理士事務所においても成熟度の高い事務所もあるので一概にはいえないが、選定する際には選択肢にいれるべきだ。

コンサルティング①

給与計算の外注・代行・アウトソーシングの選定ポイント

選定する上で、重要になることは前述した業務プロセスの洗い出しをした結果、「何を求める」かだ。

求めるものが明確にならなければ、人材をもて余してコストだけ掛かってしまう恐れがある。その点に、気を付けて選定ポイントを挙げていく。

 

正確性

何よりも求めるもので、正確性がなければ論外だ。正確性に関しては、何を求めるかは関係なく必須項目だろう。

しっかりとした業務フローがあり、二重三重と万全なチェック機能を提案できる業者を選定すべきだ。

 

スピードと柔軟性

企業によって、勤怠情報の集約方法はことなるはずだ。タイムカード、エクセル表、手書き、または現場ごとに管理方法が違うということも珍しくない。

しかし、アウトソーシング先には統一したデーターを求められる。
きっちりと、企業に合った収集方法や状況に即してスピーディかつ柔軟な対応をしてくれる点も、選定のポイントの一つだ。

 

情報管理体制

情報を提供する以上、管理体制は比較検討する上で必須項目だ。依頼する業務にとってはマイナンバーを利用する。

個人情報保護法に則り、どのような管理体制をとっているのかしっかり確認する必要がある。プライバシーマークやISO/IEC 27001(情報セキュリティ)を取得しているとある程度の担保にはなる。

 

料金

ランニングコストとして毎月発生する分、安いにこしたことはない。しかし、安い高いを判断するためには、何を求めるかを明確にしなければ見積もりじたい出すことも難しい。明確にしたものを数社から見積もりを出してもらい、比較検討が必要だ。

曖昧なまま依頼してしまうと、不必要なことまで依頼してしまう恐れがあり無駄なコストまで発生しかねない。

コンサルティング②

まとめ

いかがだろうか?アウトーシングする部分としない部分、する必要があるかないかの参考になっただろうか?

何よりも大事な事は、「何を求める」かだ。

それにより、自社内の一人当たりの人材の生産性、業務の効率性を図り企業の競争力に繋げる。競争力に繋がらないアウトソーシングは無意味と言っていいだろう。

総務・経理といった企業の裏方だけの目線ではなく、営業側からの視点も踏まえてあらゆる視点から検討を行うべきだ。
さらに、これからも労働力の減少は顕著だ。人材を探すのではなく、業務を減らすといった考えにシフトチェンジしなければ、今後も無駄なコストが発生し続ける。

経費削減にも限界がある中、業務を減らすことができるかできないかで企業の成長速度が決まるといっていいだろう。