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事務所通信
2020/04/01

労働契約解消について

「労働契約の解消」という言葉で、何を思い浮かべるでしょうか?

そもそも労働契約は、労働者が使用者に対して労働を提供し、使用者は労働者へ賃金を支払うことにより成り立つとされています。(右図参照)

さて本題ですが、「労働契約の解消」には、大きく4つあります。

辞職 労働者が一方的に契約解消
合意退職 労働者と使用者で合意の基、契約解消
当然退職 使用者、労働者双方の意思と関係なく、ある事象が発生したことによる契約解消
解雇 使用者が一方的に契約解消

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さらに4つ目の解雇にも①普通解雇②整理解雇③懲戒解雇があります。
今回の記事では、①の普通解雇について記載させて頂きます。

《 普通解雇 》

大前提、日本という国が、長期雇用のシステム(終身雇用や年功序列)を確立してきたため、当然に長期雇用を約束しているという前提のもとで話が進みます。裁判になった際、裁判所は上記の前提を大原則として、下記2点を考慮し有効性の判断がされます。

・客観的合理性(就業規則に規定された普通解雇の事由に該当)

・社会的相当性(解雇とすることがやむをえないと認められるものであること)

この2点にあてはまらない場合に解雇権を濫用したと判断され、その解雇は無効となります。単に気に入らないという理由で、自由に解雇できるわけではありません。このことが、解雇することが難しいと言われる所以です。


以下、ご参照ください。

【ケース1】協調性不足を理由に普通解雇できるのでしょうか?

・実際の裁判例においても協調性不足による解雇の事例があり、解雇は適当であると認められた実例もあります。

・通常の仕事というものは、集団での労務提供が一般的であり「協働すること」が必要なので、協調性が欠けていることにより、他の従業員の士気が下がることや、業務に支障が出ることは、従業員の「債務不履行」とみなされるというものです。

・この場合、解雇の有効性の判断においては、前述の「客観的合理性」および「社会的合理性」に加え、配置転換(別の場で、改善の機会を与える)や、注意指導(形式的なものではなく、改善を希望して声掛けをしたか)など、使用者側が改善することを希望して支援する姿勢が大事になります。また、協調性の有無は主観的なものになりますので、配置転換を行った場合や、注意指導を行った場合などは、その内容を記録に残しておくべきだと考えられます。

その他にも普通解雇には、能力不足、出勤や勤務態度不良、使用者への社会的信用や名誉を毀損したことなどによるものが挙げられます。

では、次のケースはいかがでしょう。

【ケース2】私傷病により労務提供ができない従業員に対し、休職措置を採ることなく普通解雇できるでしょうか?

・従業員が私傷病により雇用契約に従った労務提供ができなくなることは、契約上の債務不履行となりますので、原則的には普通解雇事由に該当しますが、この場合にも「客観的合理性」と「社会的合理性」が問われることになります。

「社会的合理性」の判断をする際、復職のチャンスを与えたかどうかが判断材料となります。休職には、この復職のチャンスを与えて解雇を猶予するという意味合いがありますので、もし休職措置を取らず解雇した場合は、社会的合理性がないとして、解雇無効と判断される可能性は高くなると考えられます。

その一方で、休職期間満了時に復職できる可能性が極めて低い場合には、その解雇が有効であると判断されるケースもありますが、それは特殊なケースであると考えられます。

この私傷病等による労務不能時の対応については、普通解雇事由として取り扱うのではなく、期間を定めて休職させ、従業員に復職のチャンスを与えたうえで、もし休職期間内に復職できなければ、当然退職として取り扱うということも考えられます。

その場合、重要となってくるのが、復職できる条件である「治癒」の状態をしっかり就業規則に定義しておくことが大事だと考えられます。例えば、「治癒とは、従前の業務を健康時と同様に業務遂行できる程度に回復すること」などです。

また、復職にあたり、主治医と面談を行う場合には業務内容を十分に説明し理解をしていただき、その業務が通常程度に遂行できるまでに回復しているか、継続的に労務提供ができる状態であるかをしっかり確認する必要があります。

 

今回は普通解雇について紹介させていただきましたが、『労働契約の解消』には整理解雇や懲戒解雇、採用内定者の内定取消・試用社員の本採用取消や、期間雇用者の労働契約解消など、様々なケースがあります。

どのような対応をしていくのがいいのか、お悩みの方は弊所までご相談ください。