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法律関連
2019/04/23

働き方改革関連「年次有給休暇の取得義務について」

2019年4月1日より施行された年次有給休暇の時期指定義務ってどういうこと?

1.年次有給休暇の取得義務

平成31年4月1日から施行される改正労働基準法の中で、最初に対応しなければならないのが、年次有給休暇の取得義務かと考えられます。既に事務所通信(2018年11月号・12月号)でも取り上げさせていただきましたが、もう少し掘り下げた内容をお伝えしたいと思います。

〔1〕対象労働者

この取得義務の対象となる労働者は、年次有給休暇の日数が10労働日以上である者に限られます。一般的には正社員などいわゆる通常の労働者が対象となりますが、パートタイマーなどの短時間労働者も一定年数勤続的に勤労していた場合には対象となることがありますので注意が必要です。下表【図表1】の網掛け部分に該当する人が対象となりますので、確認してください。

 

【図表1】週所定労働日数・年間所定労働日数・勤続年数別年休付与日数

 〔2〕使用者が時季指定する日数

使用者が時季を指定して付与しなければならない年次有給休暇(以下「年休」とする)の日数は、基準日から1年以内の期間に5労働日となります。この「基準日」とは、雇入れ後6か月を経過した日から1年ごとに期間を区分した期間の初日、つまり1年毎の応当日ということになります。ただし、労働者の時季指定、又は計画的付与制度により年休を与えた場合など、労働者が既に取得した年休の日数分などは5労働日から控除することができます。

先程、使用者が時季を指定するとしましたが、年休は労働者による時季指定権の行使が前提とされておりますので、取得した年休の日数分などについて使用者が一方的に時期を指定できるわけではなく、労働者の意見を尊重しなければならないことに十分留意が必要です。

なお、時間単位を導入している場合、労働者が自らの意志により時間単位年休を希望し取得することは許容されるが、使用者側から時期を指定することはできないこととなっております。

〔3〕新労働基準法適用日と罰則

特例措置として、施行日である平成31年4月1日以降に基準日を迎える労働者については、それぞれの基準日から順次この改正法が適用されることとな

り、施行日後最初の基準日の前日まではこれまでの取扱いのままとなります。

なお、基準日から1年以内の期間に5労働日の付与を行わなかった使用者には、30万円以下の罰金に処せられるという罰則も設けられました。

 

 〔4〕年休取得と、会社付与の義務との関係性

先程もでてきましたが、年休を与えた場合には、その与えた年休の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しない、つまり労働者が自ら時季指定して5日以上の年休を取得した場合や、計画的付与により5日以上の年休を取得した場合には、使用者による時季指定は不要となります。

また、労働者は、半日年休の希望を出すことができ、

会社が承認すれば、取得することができるとされていますが、この半日年休を取得した場合には会社の時季指定義務は、0.5日分軽減されます。しかし

時間単位年休に関しては、労働者が取得したとしても、会社の時季指定義務は、軽減されません。

 

 〔5〕年次有給休暇記録簿

新労働基準法により、年休を与えたときは、時季、日数、及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類「年次有休休暇管理簿」を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければならないとされ、この「年次有給休暇管理簿」については、労働者名簿または賃金台帳と合わせて調製することができるものとされております。この年次有給休暇管理簿の様式については、参考様式を用意しておりますので、事務所までお問い合わせください。

 〔6〕来年度に向けた準備

まず、正社員、パートタイマーを問わず、全従業員の年休の利用実態を把握する必要があります。

過去3年間程度のデータを基に、年5日を取得できていない理由の特定とその解消に向けた取り組みを検討、厚労省の調査によれば、全体の3分の2の労働者が、年休を取得することにためらいを感じているという結果が出ておりますが、業務量がおおい、代替要員がいない、業務が属人化している、職場の雰囲気、上司が認めないなどが考えられます。業務の俗人化からの脱却が必要だと考えられます。例えば週に1回ミーティングなどを行い、労働者の業務量、遂行状況等について、所属長のみならず同僚等を含め、把握することは有効な手段かと思います。仕事を個人ではなくチームで行い、当該労働者が休暇で不在となっても業務が回せるよう取り組むことで年休を取得しやすい職場環境への変化が期待できることに加え、仕事の共有や整理を行うことで、生産性の効率の期待ができるのではないでしょうか。

 

社会保険労務士 神田辰朗

 

厚生労働省のサイトに詳しいパンフレットもございますので、ご興味のある方はご覧になってください。